米国R2000解説レポート【志摩力男 氏】

ラッセル2000指数とは
ラッセル2000、またはラッセル2000指数(RUT Russell 2000 Index)は、米ラッセル・インベストメント社が開発した米国の代表的な小型株指数です。米小型株ファンドの多くがベンチマークとして採用しています。
米国市場(NY証券取引所、ナスダック)に上場している銘柄のうち、時価総額が上位1001位から3000位ぐらいまでの銘柄の時価総額加重平均型の株価指数です。
ラッセル社はラッセル2000のみならず、ラッセル1000、ラッセル3000という指数も発表しています。ラッセル1000は時価総額上位1000社の指数、そしてラッセル3000は時価総額上位3000社の指数です。ラッセル2000は、ラッセル3000からラッセル1000を除いたものです。
それぞれの関係性を示すと、下記の図のようになります。
ラッセル1000 | ラッセル2000 |
時価総額上位1000社のインデックス 時価総額の合計はラッセル3000の93% |
時価総額上位1001位から3000位まで 時価総額の合計はラッセル3000の7% |
ラッセル3000 | |
時価総額上位3000社のインデックス |
ラッセル2000の構成はどうなっている
ラッセル2000の構成銘柄は、時価総額1001位から3000位前後と機会的に決まっています。よって、セクターごとの構成もその時々で変化しますが、現状は(2024年9月末時点)以下のようになっています。米国株の一般的なインデックスであるSP500と比較してみます。
ラッセル2000 | SP500 | ||
資本財 | 18.9% | 情報技術 | 30% |
ヘルスケア | 17.4% | 金融 | 13% |
金融 | 17.2% | ヘルスケア | 12% |
一般消費財 | 11.9% | 一般消費財 | 10% |
情報技術 | 10.7% | コミュニケーション | 9% |
SP500との大きな違いは情報技術セクターの比率が低いという点でしょうか。
ラッセル2000 | |
構成銘柄数 | 1977 |
企業の時価総額平均値 | $3.2B(4800億円) |
PER | 17.1 |
PBR | 2.0 |
ROE | 7.9% |
ラッセル2000のPER17.1は、SP500が現在20.1であることを考えると割安といえます。
現在構成銘柄でもっとも時価総額が大きな銘柄はPCVX(バクサイト)で時価総額は約140億ドル(約2.1兆円)です。年に1回、6月末に銘柄入れ替えが行われ、時価総額が大きくなると指数から外されることになります。
ラッセル2000の値動きの特徴は
(1) 景気に敏感
ラッセル2000は中小企業のインデックスなので、景気に対して敏感と考えられています。よく「炭鉱のカナリヤ」と称されますが、景気後退を感じとると、インデックスの下げが激しくなります。
構成企業に中小企業が多いので、業績そして株価の見通しに金利が大きく影響するためでしょう。
(2)金利に敏感
一方、景気回復局面、金利低下局面では、いち早く上昇します。中小企業が多いということは、銀行からの借り入れが影響する部分が大きいこと、小型株の将来価値算出には将来の売上を現在価値に直して判断するため、金利が低下すると、株価の適正価格も上昇します。
(3)持続的上昇にもなり難い
瞬間的にはSP500等と比べて大きく動くラッセル2000ですが、長い時間軸でみると、あまり上昇していないことに気付きます。
企業の時価総額が大きくなり、上位1000社以上になった場合、自動的にインデックスから外されることになります。成長企業が途中から「卒業」してしまうため、インデックスの持続的上昇という点では物足りないものとなります。
情報技術のセクター構成比率、SP500が30%であるのに対して、ラッセル2000は10.7%。米国株上昇の原動力が情報技術であることを考えると、ラッセル2000の伸びが小さい理由がわかります。その意味では、レンジ取引には向いているインデックスとはいえます。
しかしながら、FRBはこれから金融緩和局面に入ると想定されます。政策金利が低下して行けば、ラッセル2000が上昇する余地も生まれるでしょう。

まとめ
・ラッセル2000は中小企業インデックスとしてもっとも有名。中小企業で構成されているので、短期的な景気動向、金利動向に俊敏に反応。「炭鉱のカナリヤ」
・短期的な動きが俊敏である一方、成長企業が自動的にインデックスから除外されるので、継続的な上昇にもなり難い。また、比較的割安(PER17前後)なので下落への耐性もある。
以上のことから、レンジ取引に比較的向いているインデックスとはいえます。