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米ドル/カナダドル高値更新!背景と今後の戦略は?

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はじめに

米大統領選から上昇傾向となった「米ドル/カナダドル」は、2025年2月に入ると、過去10年の高値を上抜け、その後急落するという激しい値動きになり、価格の変動が大きくなっています。この記事では米ドル/カナダドルの値動きの背景や、価格が上昇した場合の戦略について解説します。

変動の要因

現在米ドル/カナダドルが変動している大きな要因は以下の2つがあげられます。

1. トランプ政権の対カナダ関税

直近を振り返ると、米ドル/カナダドルはトランプ大統領の当選が見込まれた昨年10月頃から、大統領選挙当選後にかけて上昇が続いていました。これはトランプ氏がカナダに対する関税の導入を示唆してきたことから、カナダの米国向け輸出が悪化し、経済が下押しされるとの見方が強まったためです。
そして日本時間2月2日、実際にカナダに関税を課す大統領令に署名したことが発表されると、一時1.48手前まで上昇しました。
しかし、2月4日、トランプ大統領がSNS上で「関税の導入を少なくとも30日間停止する」と発表すると、1.43あたりまで下落しています。
この発表は、カナダの国境警備への投資や合成麻薬の取り締まりなどについて両国が合意したもので、トランプ大統領は「経済協定が構築できるかどうかを見極めるため」と述べています。
ただし、3月から関税が導入された場合米ドル/カナダドルは再び上昇する可能性がある点に注意が必要です。

米ドル/カナダドル日足チャート
関税発動の大統領令に署名するも直後に延期し大きな変動に
トライオート取引画面より(インヴァスト証券作成)

2. 米国の政策金利引き下げペースの鈍化

米国とカナダの類似する経済状況から、政策金利は連動しやすく、米ドル/カナダドルが長くレンジ相場を形成する要因となってきました。しかし最近発表された米国の経済指標は全体として底堅く、パウエルFRB議長は「利下げを急ぐ必要はない」と発言しています。
政策金利の決定で重要視されるCPI(消費者物価指数)を見ていきましょう。
両国とも物価上昇率の目標2%に対し、1月は米国が2.9%、カナダが1.8%と、米国は依然インフレ状態にあり、一方のカナダは目標を下回る水準となっています。また、トランプ政権の関税導入により、カナダの景気への先行きの不安から利下げを進めています。

米国とカナダの物価上昇率
(インヴァスト証券作成)
米国とカナダの政策金利
(インヴァスト証券作成)

米国の経済指標の結果を受け、FOMCの2025年の利下げは昨年9月地点で年4回と見込まれていましたが、12月には2~3回に引き下げる見通しが立てられ、引き下げペースの鈍化が進んでいます。
また、トランプ大統領の経済政策によって米国のインフレが進行するとの見通しも立てられています。

米ドル/カナダドルの価格の推移

次に、過去10年間のチャートを見ていきましょう。
米ドル/カナダドルは長期的に一定の値幅(レンジ)で上下を繰り返しており、2016年1月には米国の政策金利引き上げにより1.47付近まで上昇しました。2020年3月にはコロナショックによって1.46後半まで上昇し、その後下落しています。
そして2025年2月、過去の高値である1.47を上に抜けた後下落しています。
過去の高値は買い建玉を保有している投資家の売り決済や、新規の売り参入などの目安となり、一定の価格帯(例:米ドル/カナダドル1.47~1.48)到達後反転するケースがあります。

米ドル/カナダドル 1.47~1.48到達後下落
トライオート取引画面より(インヴァスト証券作成)

これは米ドル/カナダドルに限らず、他の通貨ペアでも起こり得ます。
例えば豪ドル/NZドルは2015年6月ごろ1.14前半を付けました。2022年9月に2015年の高値を抜け、1.15手前まで上昇しましたがその後下落しました。

豪ドル/NZドル 1.14~1.15到達後下落
トライオート取引画面より(インヴァスト証券作成)

ただし、過去に反発した価格帯を明確に超えた時には、買い勢力の買い増し、参入や売り建玉を保有している勢力の損切りが重なり上昇する場合もあります。その場合、次の買いの決済や売りの参入で意識される価格は、大台や過去つけたさらに高い価格帯になりやすい傾向があります。
米ドル/カナダドルの例として、今回の上昇で超えなかった1.48や大台となる1.50、過去25年の最高値の1.62が挙げられます。

トライオート取引画面より(インヴァスト証券作成)

今後どうすればよい?

1.48を上限に運用を続ける方法があります。過去の価格推移から、1.48を超えても下落する可能性があるため、継続運用も選択肢の一つです。
ただし、1.48以上は空白地帯であり、売り建玉を保有している場合評価損が増え、有効比率が低下し、ロスカットのリスクが高まります。お客様の証拠金によっては以下の方法でご資金に余裕を持たせることを検討しましょう。

・入金する
有効比率を上げるために、新たに資金を入金する方法です。
入金目安の例としては、有効比率を300%に引き上げることや、目標価格(1.50等)まで運用を続ける証拠金にすることなどがあげられます。

・建玉の一部を決済する
決済することでその分評価損は確定しますが、さらなる評価損の拡大を防ぎ、また必要証拠金を減らすことができます。基準として、保有している建玉のなかで利確する可能性が低い、現在の価格から遠い建玉から決済することをおすすめします。

トライオート取引画面より(インヴァスト証券作成)

また、1.48を上抜けた場合、次の目標価格が遠い為、運用停止や他の自動売買に乗り換えることも検討しましょう。
例えば豪ドル/NZドルや米ドル/スイスフランなど、現在も安定してレンジ内で推移しています。
稼働している自動売買(米ドル/カナダドル)を停止させても、保有している建玉は設定された利確価格に到達しないと決済されないため、ご自身で決済する必要がありますのでご注意ください。

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まとめ

経済状況やトランプ政策の影響で上昇し、過去10年の最高値を更新した米ドル/カナダドルは1.47~1.48の価格帯に到達した後下落に転じています。ただし2025年3月に関税が導入された場合、米ドル/カナダドルは上昇する可能性があります。今後上昇し1.48を超えた場合は、本記事で記載した内容をご検討いただければ幸いです。
引き続き今後の経済指標やトランプ大統領の動向などに注目し、ご自身が運用するルールに設定されたレンジで推移していることを確認しながら運用をおこなっていきましょう。