
1. 相場の方向性がわかる移動平均線 方向性がわかれば利益を上げやすい?
移動平均線は多くの投資家に利用されているもっともポピュラーなテクニカル指標で、ざっくり言えば相場の方向性(トレンド)を把握するためのツールになります。
「こちらでご紹介した」トレンドラインと同じようなものなんですね。相場の方向性がわかれば売り買いのタイミングがつかめるので利益も上げやすくなります。

具体的には、移動平均線が上向きなら相場は上昇トレンド、移動平均線が下向きなら相場は下降トレンドと読み取ります。
そしてもう一点、移動平均線と価格の位置も見ておきましょう。
移動平均線が上向きのときは概して価格が移動平均線より上にあって、移動平均線が下向きのときは価格が移動平均線よりも下にありますよね。(緑色の網掛け)
このように、移動平均線の向きと、移動平均線と価格の位置を見て、相場のトレンドを把握するというのが、移動平均線の基本です。もちろん、上昇トレンドなら買い、下降トレンドなら売りと判断します。
2. 移動平均線は一定期間の価格の平均
実際の相場は、日々、上がったり、下がったりしていますよね。
それを一定期間の終値の平均値をとることで、バラつきを無くし滑らかな線にしたものが移動平均線なんです。
日々ジグザグ動いている相場を滑らかにすれば、方向性が見えてくるということですね。
ちなみに、正式名称は単純移動平均線(SMA:Simple Moving Average)と言い、移動平均線と言ったら、普通はこの単純移動平均線のことを意味します。

3. 移動平均線を利用した3つの売買手法
移動平均線を使った売買手法は主に3つあります。ここではその3つの売買手法についてお伝えいたします。
3-1 移動平均線を1本利用するグランビルの法則

アメリカの新聞社の株式部記者でアナリストのジョセフ.E.グランビルが考案した移動平均線を利用した売買サインです。
着目する点は、移動平均線の向き、そして移動平均線と価格の位置で、特に移動平均線と価格が交差するタイミングが絶好の売買サインになります。
ただし、移動平均線が横ばい(水平)な状態が続く際には、あまり上手く機能しないので、移動平均線の向きをしっかり把握しておく必要があります。
【グランビルの法則】
買いサイン
◎買1 移動平均線が下降から上昇に変化する中で、価格が移動平均線を上回ったとき
買2 移動平均線が上昇していて価格が移動平均線を一時下回ってから再度上回ったとき
買3 移動平均線が上昇していて価格が移動平均線に近づき再度上がり始めたとき
買4 移動平均線が下降していて価格が移動平均線の下側に大きくかい離したとき
売りサイン
◎売1 移動平均線が上昇から下降に変化する中で、価格が移動平均線を下回ったとき
売2 移動平均線が下降していて価格が移動平均線を一時上回ってから再度下回ったとき
売3 移動平均線が下降していて価格が移動平均線に近づき再度下がり始めたとき
売4 移動平均線が上昇していて価格が移動平均線の上側に大きくかい離したとき
特に買1と売1の売買サインが最も重要だといわれています。

実際のチャートで確認!
【英ポンド/豪ドル 週足】
※ピンク色の数字が買いサイン、水色の数字が売りサイン
3-2 2本の移動平均線を利用する ゴールデンクロスとデッドクロス

「25日線と75日線」や「13週線と26週線」の組合せのように、期間の違う2本の移動平均線を利用した、最も投資家に良く知られている売買サインが、「ゴールデンクロス」と「デッドクロス」です。
具体的には、例えば25日線のような短期移動平均線が75日線のような長期移動平均線を上回ったら買い、逆に、短期移動平均線が長期移動平均線を下回ったら売るというものです。
買いサイン
ゴールデン・クロス(G.C) 短期移動平均線が長期移動平均線を上回ったとき
売りサイン
デッド・クロス(D.C) 短期移動平均線が長期移動平均線を下回ったとき
ただし、保ち合い(もちあい)相場のように、トレンドが発生していない横ばいのボックス相場では機能しないので、移動平均線が横ばいになっているかどうかを確認して、相場にトレンドが出ていることを把握して利用しましょう。
※ボックス相場でのゴールデンクロスやデッドクロスは損切りの連続になることが多いので要注意!

実際のチャートで確認!
【英ポンド/豪ドル 週足】
このように上昇でも下降でもトレンドが出ている際には、この売買サインが機能していることがわかります。
3-3 グランビルの法則とゴールデンクロス、デッドクロスの合わせ技
期間の異なる複数の移動平均線と価格の位置関係を利用して売買を考える方法で、上でご紹介したグランビルの法則の考え方とゴールデンクロス、デッドクロスの考え方を利用した売買方法になります。
売買サインの詳細はそれぞれの移動平均線と価格の位置から次のイメージ図の通りになりますが、必ず移動平均線の方向性を確認して利用しましょう。

例えば、Aは価格がチャート上の一番高いところにあり、次が短期移動平均線、一番下が長期移動平均線という状態です。
実際のチャートでAの買いの状態とDの売りの状態になっているところを示したものが下のイメージでの赤枠部分(A)と青枠部分(D)になります。

AとD以外のB、C、E、Fは相場がどういう状況のところか、ご自身で確認してみてください。
【英ポンド/豪ドル 週足】
※Aは赤枠、Dは青枠で示しています。
4. 移動平均線を利用した具体的な分析手順
移動平均線の売買サインがわかったところで、次は実際に分析の手順です。
月足から順に週足、日足というように長い時間軸のチャートから確認していきましょう。
例えば、最終的に日足で売買を考えるなら、月足チャートや週足チャートのトレンドを確認してから、最終的に日足チャートで売買タイミングを決めるといったイメージです。トレンドは期間が長ほど信頼性が高く、逆に日足や時間足のような短い期間のものだと「ダマシ」とよばれる信頼度の低いサインが出る事があるので、月足チャートや週足チャートでは方向性だけはしっかりと確認しておきます。

もう少し中長期的な観点で週足チャートで売買する場合も同じです。
月足チャートのトレンドを確認して、最終的に週足チャートで売買タイミングを見極めましょう。
月足チャートが上昇トレンドなら週足チャートで買うタイミングを、逆に月足チャートが下降トレンドなら週足チャートで売るタイミングを探るといった具合です。

4-1 移動平均線の平均する期間について

日足チャートなら25日線(25日移動平均線)や75日線、週足チャートなら13週線(13週移動平均線)や26週線(26週移動平均線)、52週線(52週移動平均線)などといった移動平均線の平均する期間は、基本的には一般的に利用されているものがお薦めです。
もちろん、銘柄毎に自分で設定した期間を利用してもいいですが、特にこだわりがないのであれば、多くの投資家が見ている一般的な移動平均線を利用しましょう。
ちなみに欧米では20日線や40日線、50日線などが良く利用されています。下の表は月足、週足など足種別で良く利用される数値です。
※日足や週足などの移動平均する期間は、1ヵ月や3ヵ月、6ヵ月などになっています。
※もっと期間の短い足種、例えば1時間足や5分足などで移動平均線を利用する場合、24時間(1時間足なら24期間の移動平均線)や12時間(30分足なら24期間、15分足なら48期間)、6時間(15分足なら24期間、5分足なら72期間)のように、利用するのが一般的です。
※特に決まった組合せはありませんが、25日線やその3倍の75日線、更にその2倍の150日線というように、短いものを2倍、3倍程度した期間で利用することが多いです。
5. 移動平均線のデメリットとその解消策
ここでは移動平均線のデメリットについて詳しくご紹介します。
5-1 移動平均線は反応が遅いというデメリットがある!
移動平均線の最大のデメリットは相場への追随性が遅くなるということです。
追随性が遅いとは、相場が天井を打って下げ始めて少し経ってから移動平均線も下げ始めたり、相場が底打ちして上げ始めて少し経ってから移動平均線も上がり始めたりするということです。
でも、トレンドってトレンドが出始めてから確認できるので、これは仕方が無いことなんですよね。

次の4つのグラフをご覧ください。ちょっと難しいかもしれませんが、左上が価格チャート、左下が価格チャートを2日分未来にシフトしたもの、右上が当日を含む前後2日を平均化したチャート、右下が5日移動平均線を示したものになります。
そこでまず右上のチャートをご覧ください。
これは普通の移動平均線(右下の移動平均線)を2日過去に移動したものになるのですが、移動平均線が価格と同じタイミングで上下しているのがわかりますよね。
このように平均化する期間の半分程、移動平均線を過去にシフトすると相場と同じタイミングで移動平均線の方向性が変化するということは、言い換えれば、移動平均線は平均化する期間の半分ほど、価格の変化から遅れているということです。
実際のチャートで確認!
下のチャートは米ドル/円の週足チャートと26週移動平均線(ピンク色実線)、更に、26週移動平均線を13週過去にシフトしたもの(濃いピンク色の破線)です。

このように、移動平均線を平均化する期間の半分だけ過去にシフトすると、相場の変化と同じタイミングで移動平均線の方向性も変化するとわかります。
そして、実は移動平均線が価格の推移に遅れて反応する為に、グランビルの法則やゴールデンクロスなどの売買サインが生じてくるってことなんです。
5-1-1移動平均線のデメリットを改良したツールは使わなくていい?
知ってる方も多いと思いますが、(単純)移動平均線の反応の遅さなどに着目して、次のような改良版の移動平均線もありますが、個人的にこだわりが無いのであれば、特に使わなくてもいいと思います。
【価格追随性の遅さを改良した移動平均線】
・加重移動平均線(WMA:Weighted Moving Average)
・指数平滑移動平均線(EMA:Exponential Moving Average)
・DEMA(Double Exponential Moving Average)
・TEMA(Triple Exponential Moving Average)
・修正移動平均(RMA:Running Moving agerage,MMA:Modified Moving Average,SMMA:Smoothed Moving Average)
・T3 Moving Average
等
【価格自体の重要性を意識した移動平均線】
・出来高加重移動平均(VWMA:Volume-Weighted Moving Average)
【少し特殊な移動平均線】
・三角移動平均線(TMA:Triangular Moving Average )
これらの改良版移動平均線を使わなくてもいい理由は次の2つ。
1つは、価格の追随性が遅いことで、グランビルの法則やゴールデンクロス、デッドクロスという売買サインが出るから。
先程の4つのグラフの左下、価格を2日未来にずらしたものをご覧ください。

価格を2日未来にずらすと、黒い価格の線と黄土色の線が交わって、それが売買タイミングとして利用できます。
売買サインは多少遅れますが、相場の世界では昔から「頭と尻尾(しっぽ)はくれてやれ」って言うんです。トレンドを見極めてトレンドに乗って売買をしようねということです。
もう1つの理由は、多くの投資家が見ている移動平均線が、改良版ではなく、単純移動平均線だからです。
基本的にはマーケットが意識しているものを使うようにしましょう。
6. 移動平均線のまとめ
いかがでしたでしょう?
いままで何気なく眺めていたチャートや移動平均線。これから移動平均線と価格の位置関係を見ることで相場のトレンドが把握でき、移動平均線の方向や価格の位置関係からトレードにつなげられますよね。
是非、活用してみてください。