
■連邦公開市場委員会の結果
9月21・22日の両日に渡って開催されていた米国の政策金利を決定する会合、連邦公開市場委員会(FOMC)が終了し、リリースが出されました。
米国の政策金利であるフェデラルファンズ・レート(略してFFレート)に変更は無く、0~0.25%が堅持されました。
債券買入れプログラムに関しては、現在、毎月米国財務省証券を800億ドル、住宅抵当証券を400億ドルのペースで買い入れているのですが、「経済は雇用の最大化と物価の安定という二つの目標に向けて進捗があったので、買い入れ額を減らすことは近々正当化できる」という記述がリリースの中に盛り込まれました。
FRBがFOMC声明文の中で買い入れ額の減額(=テーパー)に言及したのは、今回が初めてです。
■記者会見
パウエル議長の記者会見では「次のミーティングでテーパーするかどうか決める」と明言しました。
さらに「来年の半ばまでにテーパーは完了する」ということも明言しました。
すると「11月からテーパー開始!」という直接的な表現こそ避けられているものの、逆算すれば11月からテーパーを開始し、毎月米国財務省証券は100億ドル、住宅抵当証券は50億ドルのペースで減額し、5月を最後に債券の新規買入れはゼロになるということを実質的に認めたと言っても言い過ぎではないと思います。
パウエル議長は「量的緩和政策の利用価値は賞味期間が過ぎた」とまで言っており、テーパーへの決意の固さを感じさせました。
■来年の利上げのタイミング
さて、そんなわけで2022年の5月ないしは6月にはテーパーは完了するわけですが、テーパーの完了は次に自動的に利上げへと移行してゆくことを意味しません。
パウエル議長は「利上げに際してはテーパーの決断よりももっと厳格なハードルをクリアする必要がある」としてテーパーと利上げを切り離して考えていることを説明しました。
しかしドットプロットを見れば1名のメンバーを除けば全員のメンバーが2023年には利上げが始まっていると予想しています。
■経済予想サマリー
今回のFOMC声明文には経済予想サマリーが添付されていました。経済予想サマリーとはFRBメンバーが思い思いの予想数字をアンケート方式で回答、それを集計したものを指します。
まずFFレートの予想の平均値は下のチャートのように上昇しました。(今回の数字は黄色で示されています。)

次にGDP予想の平均値は下のチャートのようになっています。2021年のコンセンサスは新型コロナのデルタ変異株の影響で下がり、来年の予想は逆に上昇しました。

失業率の予想の平均値は2021年の数字が少し悪化しました。

PCE(個人消費支出)インフレの予想の平均値は半導体不足に代表されるボトルネックに起因するインフレが長引いていることを受けて、2021年の平均値が上昇しています。

■まとめ
以上をまとめると今回のFOMCでパウエル議長はテーパーを近く開始する決意をいままで以上に明快なカタチで声明文の中に盛り込みました。
さらにテーパーの完了の時期を「来年の半ば」と明言することで、事実上、毎月のテーパー額に関してもかなり具体的なイメージを示しました。
今日のところ市場参加者はこのメッセージを淡々と受け止めたと思います。