
■非農業部門雇用者数
2月の非農業部門雇用者数は予想の18.2万人を大幅に上回る37.9万人でした。

1月の数字も大幅に上方修正されたのでこれらのデータを総合すると雇用市場は思ったよりいい感じで回復していると言えます。
ポジティブサプライズになった主因は新型コロナ第三波がだいぶ収まって来てレストランなどのサービス業が活況を取り戻しつつあることによります。小売業は4万1千人を新規に雇用しました。一方製造業も2万1千人を新規に雇用しています。その反面、2月の寒波で建設の雇用は-6万1千人でした。
■失業率
失業率は予想6.3%に対し6.2%でした。

失業率の改善も歓迎すべきサプライズでした。労働力率は1月と同じ61.4%でしたので失業率の改善は求職を諦めた人が増加したからではありません。

■マイノリティー/低学歴の雇用は悪化
このように今回の雇用統計は明るいニュースだと言えますがマイノリティーや低学歴の雇用が逆に悪化した点は残念でした。下は人種別失業率ですが黒人の失業率が上昇している点に注目して下さい。

同様に学歴別失業率をみると中卒の雇用が悪化していることがわかります。

■連邦準備制度理事会の次の一手
今回の雇用統計の発表に先立ち、連邦準備制度理事会(FRB)のラエル・ブレイナード理事は「FRBの新しい金利政策決定枠組みでは雇用市場の改善は単に失業率が低くなるというだけではダメでマイノリティーや低学歴者を置き去りにしてはならないことが盛り込まれている」と強調しました。
これは上にみた黒人や中卒の雇用が改善しなければFRBは利上げしないことを示唆しています。
FRBはインフレが2%に近づいても慌てて金融引き締めせず、一定の期間じっくり様子を見ることで均して見たときインフレが2%前後に収まっていれば慌てて動くに及ばすという新方針を打ち出しました。マイノリティーや低学歴者への配慮もそのようなゆっくりとした手綱さばきを補強する議論です。
このことから今回の雇用統計が強かったにもかかわらずFRBのメッセージは何も変わらないと考えるのが順当だと思います。