ノルウェークローネ スウェーデンクローナ-2025年相場見通しと戦略-

金融政策の状況次第も、保合が続きそう?

※本記事は2024年12月末時点に作成しております。文中の内容は作成時点の情報に基づくものとなっております。

2024年のNOK/SEK相場】

 2024年のNOK/SEK相場は、揉み合い気味の展開も、ノルウェー中央銀行(ノルゲバンク)が政策金利を4.50%で年間を通じて据え置く一方、スウェーデン国立銀行(リスクバンク)が、4.00%の政策金利を2.75%まで引き下げるも相場の支えとはならず、近年としては安値圏での推移が続きました。

NOK/SEK相場は、年初の0.9835を安値に、対ドルでノルウェー・クローネが年間の高値をつけたことで1.0066まで反発後、スウェーデンのNATO加盟期待や新原発が認可されたことなどで0.9710まで下落しました。

ただ原油価格が年間高値をつける流れで1.0135まで上昇、これがNOK/SEK相場の年間高値となりましたが、その後0.9767まで下落後、スウェーデン国立銀行(リスクバンク)が8年ぶりの利下げを実施したことで0.9990でまで小反発。ここで上値を押さえられて、年間安となる0.9506まで下落しました。

その後も上値が0.9831で押さえられて、原油価格が年初来の安値となる65.29ドルまで下落、スウェーデン・クローナ相場が、対ドルで年初来の高値を付ける形から0.9536まで再下落しましたが、これが下値を支えました。

またスウェーデン国立銀行(リスクバンク)が2会合連続で0.25%、11月の会合では0.50%の大幅な利下げを実施、米大統領選を睨んでウクライナ紛争が激化、ロシアが核利用規定を改定したことなどから、ウクライナやロシアに近接するスウェーデン経済への懸念が高まり、1.0002まで急反発して、2024年の取引を終了しました。

2025年の主な材料】

以下が現在、判明している2025年のイベントや材料です。注目度の高いものは太字で表示しています。ただ、あくまで予定で、変更されることがあります。

 リポートの作成時点では、情報量が少ないのは残念ですが、やはり年初から大注目となるのは、1月20日からスタートするトランプ次期政権です。トランプ氏は、既に追加関税など多くの発言をしていますが、就任当日から多くの「大統領令」に署名する見通しです。その内容次第では、市場を大きく混乱させることは間違いなさそうです。トランプ氏の政策に関しては後述しますが、2025年の相場を考える上で、特に注意を払っておく必要があるでしょう。

 また、2024年は「選挙の年」でしたが、2025年にはあまり大きな選挙はありません。ただ、ショルツ独首相の連立政権が崩れたことで、2月には独連邦議会選挙が、前倒しで実施されます。2024年世は界各国で与党勢力がことごとく選挙で敗退しています。この潮流は止まりそうもありません。保守派与党のキリスト教民主同盟(CDU)とキリスト教社会同盟(CSU)が大敗するようなら、大きな混乱を招きそうです。その場合ユーロ相場の圧迫要因となることは留意しておきましょう。 

 一方日本では、7月に参議院選挙と東京都議会選挙が行われます。都議会選挙の影響は直接的にはありませんが、昨年の解散衆議院選挙では、裏金問題などから自民・公明両党が過半数を割れたことで、日本の政局も混乱しています。一部では衆参同時選挙の可能性も指摘されていて状況次第では、再び自公連立が過半数を維持できない可能性もありそうです。その場合石破総理の総理存続も難しくなりそうです。金融面では政局不安が、株価に悪影響を与えるでしょう。為替に対する影響は不透明としても、通常なら株価の下落がリスク・オフの円買いにつながる可能性を考慮しなければなりません。ただ、もしこれが株安、債券安、円安と「トリプル安の日本売り」に繋がるなら大惨事となりそうです。2025年は日本の政局にも注意を払っておきたいと思います。

 その他では、1月から再び米国の債務上限の期限を迎えます。この問題は、12月13日現在あまり話題となっていませんが、恐らく年内に延長され直ぐには問題にならないでしょう。ただ、2025年初頭には再び大きくクローズ・アップされる可能性があり、問題が長引けば米国債の格下げのリスクとなります。毎年のことで若干食傷気味の話題ですが、特に2025年はイーロン・マスク氏が率いる「政府効率化省(DOGE)」がスタートします。「小さい政府」を目指す共和党が、本当に米国の財政問題を解決できるのか、それとも混乱につながるのか注視しておきましょう。

 また、欧州関連では、7月からブルガリアが、通貨ユーロを導入する予定を表明しています。現在の情報ではまだ確定しているわけではありませんが、もし今後決定するようなことがあれば、ユーロを取引する場合には注意が必要です。EUの参加国が、新たにユーロを導入する場合、導入日に一気に通貨が変更されます。ブルガリアの場合、元来2025年から予定されていましたが、7月1日に一旦延期されたようです(過去の通例では1月1日に導入するのが基本)。その場合6月末のコンバージョン・ファクター(交換率)によって、一気にブルガリア内の資産・負債が、ブルガリア・シフからユーロに代わります。つまり、ブルガリアの企業や個人などは、この変更によって大きな為替リスクを負うことになります。当然それを避けるために、事前にヘッジしようとうする行為が自然に行われると思います。つまり、ユーロ・シフ相場では、7月に近づくにつれてユーロ買いが増加しユーロを押し上げる形になります。

 近年では、エストニア(2011年)、ラトビア(2014年)、リトアニア(2015年)、クロアチア(2023年)の導入時に、国の規模により影響度は限られますが、このような傾向がユーロ相場の動きに見えています。まだ2026年からの導入となる可能性がありますが、どちらにしても、もし決定された場合のユーロの動きにも注目しておきましょう。

加えて、近年では年初から大きく世界を変えるような事件や事象が起きています。2020年にはパンデミック、2022年はロシアのウクライナ侵攻、2024年は元旦から能登半島地震、年央からはイスラエルのガザ侵攻など金融市場に大きな影響を与える「リスク」が発生しています。2025年もそのような「ブラック・スワン」が起きるかは誰にもわかりません。起きて欲しくはないですが、奇しくも2025年はアストロ的に、太陽の黒点数がピークに達します。以下のチャートをご参考頂きたいのですが、太陽の黒点の数は、約11年周期で増加・減少を繰り返しています。そして増加のピークと減少のピーク時(半期)には、ぴったりではありませんが、過去ドル暴落、ブラック・マンデーやリーマン・ショックなど多くの金融ショックの発生と重なっています。これが2025-26年にピークをつけて、2031年まで減少過程に入ります。

特に黒点のピーク時は、太陽内で水爆の100万個分相当の爆発が発生し、太陽フレアによる電磁波が地球にも大きな影響を与えるとされています。それが地球を回る衛星を破壊・損失させたりすれば、GPSや通信、インターネット回線や携帯端末に過大な影響を与えるかもしれません。それが世界的に発生した場合、どういった混乱となるか恐ろしい気がしますが、特に金融関連で考えるとインターネットやコンピューターを取引の基盤としている「仮想通貨取引」に大きな影響を与えるかもしれません。それでなくても異常な高値となっていて危険ゾーンにあるような気がしますが、2024年、10万ドルを超えたビットコイン相場が暴落でもすれば、その影響は世界的な資産クラッシュの動きにつながりそうです。

またこれは蛇足ですが、日本の干支をベースとした相場格言に、「辰巳天井」という言葉があります。これは辰年と巳年の間に株価が大きなピークをつけて、下落相場に転換するというものです。日本の格言が米国や海外株式市場でも適応されるかは疑問も多いですが、辰年の2024年のNYダウやナスダック指数、日経平均株価の歴史的な高値更新やこの黒点のピークと合わせて考えると2025年、大きな金融ショックが起きる可能性も捨てきれません。悲観的過ぎるかもしれませんが、少なくとも近年は、温暖化の影響もあってか、自然災害、加えてウクライナや中東紛争などの世界的な軍事紛争が続き、自然・地政学リスクが市場の混乱につながっています。2024年7月13日に起きたトランプ氏の暗殺未遂と共に考え合わすと、トランプ氏が神がかり的に生還し、更に大統領選で勝利するという運命の不思議が、2025年以降の世界の分かれ目となるのかもしれません。

あくまで個人的な妄想ですから、信じて頂く必要はありません。ただ、それでなくとも、自然災害や紛争、金融リスクは突発的に起こることで、準備することはできませんが、常にこういったリスクも念頭に入れて、相場に臨む姿勢を維持しておいた方が得策かもしれません。

2025年の注目点】

 2024年の相場環境を踏まえて、2025年のNOK/SEK相場の注目点をまとめてみました。

  • ノルウェーとスウェーデンの経済
  • ノルウェーとスウェーデンの政策金利差
  • 原油価格との関連性

ノルウェーとスウェーデンの経済

 ノルウェー経済は、豊富な天然資源と堅実な財政政策に支えられ、安定した成長を続けています。特に石油・天然ガス産業は主要な収入源であり、政府はこれらの収入を「政府年金基金グローバル」に蓄積し、将来の世代のために運用しています。

 2024年第3四半期のGDPは前期比0.5%増加し、エコノミスト予想の0.3%を上回りました。これは製造業の好調が主な要因とされています。 一方、ノルウェー中央銀行(ノルゲバンク)は、インフレ抑制のため政策金利を4.50%に引き上げ16年ぶりの高水準で据え置いています。2025年もこの状況が続けばこの金利水準を維持する見通しです。 ただ、エネルギー価格の変動や国際経済の影響を受けやすい側面もあり、引き続き注視が必要です。

 スウェーデン経済は、2024年に入り厳しい状況が続いています。第2四半期GDPは前期比0.8%減少し、前年比では横ばいとなりました。更に第3四半期も前期比0.1%の減少を記録、2四半期連続のマイナス成長により、技術的なリセッション(景気後退)に突入しています。

 この経済低迷の主な要因として、住宅投資の落ち込みやサービス輸入の増加が挙げられます。一方で、家計消費は6四半期ぶりに増加するなど、部分的な回復の兆しも見られます。

 政府は2025年の経済成長率予測を2.5%から2.0%に下方修正、2024年の成長率も0.8%から0.6%に引き下げました。また、2024年のインフレ率は1.9%、2025年は2.0%と予測しています。財務大臣のエリザベス・スヴァンテッソン氏は、経済の弱さがしばらく続くとの見解を示しています。

 そのためスウェーデン国立銀行(リスクバンク)は、インフレ抑制のため政策金利を2023年に4.0%まで引き上げましたが、2024年5月以降は段階的に引き下げを行い、2024年11月時点では0.25%まで引き下げています。

 2025年もインフレや住宅市場の低迷などで経済の停滞が続けば、さらなる金融政策の調整が検討される可能性があります。

〇ノルウェーとスウェーデンの政策金利差

 スウェーデンは、2024年に4.00%から2.50%まで政策金利を大きく引き下げました。一方ノルウェーは、4.50%で据え置いています。通常なら金利差面からノルウェー・クローネ高が強まりそうですが、以下両国の金利差とNOK/SEK相場を比較したチャートからは、過去非常に高かった連動性も、現在はこの兆候は見えていません。

 特に2024年に入ってこの現象が見えていますが、それだけスウェーデン国立銀行(リスクバンク)の利下げスピードが速かったことになります。ただ、2025年もスウェーデン国立銀行(リスクバンク)は利下げを継続する可能性が高く、ノルウェー中央銀行(ノルゲバンク)は政策金利の据え置きを続けそうです。その面では、金利差に着目したノルウェー・クローネ買いが再び入って来るのか注目しましょう。

〇原油価格との関連性

 ノルウェーとスウェーデンは、原油の輸出国と純輸入国の差はありますが、過去対ドル相場では、原油価格との連動性が非常に高いようです。ただ、現状パンデミックやロシアのウクライナ侵攻後は、この関係が崩れています。そうなると当面は原油価格の動向に注意を払う必要はないと考えられますが、もしウクライナに和平が訪れ、原油価格が安定した場合、また同調性をみせる可能性があることは、留意しておきましょう。

【テクニカル面】

≪ドル/ノルウェー・クローネ≫

まず、NOK/SEK相場を形成する、ノルウェー・クローネの対ドル相場の月足からチェックしておきましょう。

 ドル・クローネは、4.9651で安値後は、堅調に上昇しています。、特に現状は0.5303からのチャンネル上昇波に維持されて、歴史的な高値12.1493に迫る11.47741まで値を上げています。

 上値は、歴史的な高値圏で不透明感が強いですが、11.4771を越えると1.121493の上ヒゲを除くとポイントがありません。一応計算値からは5.5303から8.9869の上げ幅を8.1545から上げた11.6111、4.9651から8.9869、までの上げ幅を、同様に8.1545から上げた12.1763などが想定されますが、実際実現するかは不透明です。ただ、ポイントがないだけに、上昇した場合の利食い場として想定しましょう。

 一方下値は、スロー・ストキャスティクスの反転上昇もあって、既に水色ゾーンが維持されると堅調です。この位置は既に10.0561などが維持されると強い形ですが、割れても9.6984から9.9251ゾーンは買いが入り易そうです。リスクは8.2812や8.1545を割れるケースですが、それでも総じて8.0000前後のネック・ラインは維持されるでしょう。

 従ってドル・クローネ相場の2025年の予想レンジを9.9000から12.0000とします。

≪ドル/スウェーデン・クローナ≫

 次にドル・クローナもみてみましょう。

 安値の0.59790から順調に値を上げ、11.4967の歴史的なドル高となっています。現状スロー・ストキャスティクスも反転上昇気味で、9.9067の戻り安値が維持されると強い形です。ただ、維持出来ない場合も、水色の9.0000までの下限の位置は底堅い位置で、総じて買い場となります。このリスクは8.9948の安値割れですが、その場合も8.5066などに最終サポートが控えていて、堅調が維持できそうです。リスクは、過去のネック・ゾーンと合致する8.1259や7.8273を割れるケースとなります。

 一方上値ですが、上昇期待も11.4967からのレジスタンスとして、11.2735の手前が抑えられると上値追いは厳しく、その場合ざっくりと10.0000から11.3000程度のレンジに留まる可能性もありそうです。あくまで11.4967を越えてですが、歴史的な高値圏でポイントが不透明ですが、5.8193から9.4479までの上げ幅を8.1259から上げた11.7545、5.8193から10.4970までの上げ幅を8.1259から上げた12.8036などが推定されます。

 従って、2025年のドル・クローナ相場の想定レンジを、9.5000から11.50000とします。

≪マトリックス・チャート≫

 以下はドル/クローネ相場とドル/クローナ相場の想定レンジから算出したマトリックス・チャートです。 

 ドル/クローネの想定レンジを9.9000~12.0000、ドル/クローナの想定レンジを9.5000~11.50000としましたので、これから算出されたNOK/SEK相場の最大想定レンジは、0.7917から1.1666となりますが、広すぎることから、0.8715から1.0743を適正レンジとして想定します。

≪NOK/SEK

最後にNOK/SEKを月足からテクニカルをみてみましょう。

有限会社フォレックスラジオ作成

 NOK/SEK相場は、1.3183の高値から調整が続き、一時0.8521まで下ヒゲを描くも、これを維持して反発が1.1144で限定されて調整気味の展開です。ただ、下値は0.9506が現状支えていて、スロー・ストキャスティクスにもどうにか下げ止まりが見えています。この維持が続けば堅調が想定されそうです。リスクは0.9269の戻り安値割れですが、その場合0.8521の下ヒゲまでポイントがなく、サイコロジカルな0.90000などが支えることが出来るかが焦点です。

 一方上値は、水色のゾーンとなる1.0135から1.0444が押さえるとレジスタンスが有効ですが、1.0488やサイコロジカルな1.0500をしっかりと超えると1.1024、1.1115-44の上ヒゲ圏がターゲットとまります。この位置の上抜けは不透明ですが、1.1346を越えると1.15前後で過去の相場の総じて中心レベルまでターゲットとなりますが、重い位置となりそうです。 

【予想レンジと戦略】

 それでは以上を踏まえて、NOK/SEK相場の2025年の見通しと戦略についてお話します。

2025年のNOK/SEK相場の想定レンジを0.9500から1.0500としました。

≪戦略の前提≫

・対ドルでは、両通貨とも売りですが、NOK/SEKではスロー・ストキャスティクスが反転の兆しを見せていて、長期の安値圏にあることもあって、押し目買いを優先します

・もし、ウクライナ情勢に変化があった場合の荒れた展開には注意しましょう

・金利面では、クローネに見直し買いが入ると見ています

・クロス相場の場合ストレートの動き次第では、テクニカル的なポイントと合致するとは限りません、オーバー・シュート的な騙しの動きも留意してください

≪NOK/SEK相場の具体的な戦略≫

基本的な中期スウィング・トレードの戦略は、押し目買いです。ストップを0.9269において、0.95前後から買い下がりましょう。またストップをつけても、0.90では0.8521をストップに買い直します。ターゲットは、1.0498が押さえると利食いとなりますが、その場合も買い回転を利かせる戦略を維持しましょう。あくまで1.0488や1.0500を越えて、1.11台を視野にしますが、こういった上昇ではしっかりと利食っておきたいと思います。

また売り戦略ですが、レンジ的な展開が続くなら短期張りで随時検討出来るでしょう。ただ、長期的なら、1.11台での売り狙いは、1.1346をストップ、1.5前後からの売り狙いの場合は1.2063がストップとなります。その場合の利食いは、下げ止まりを見ながら任意となりますが、恐らく0.95は最低でも守られるでしょう。 

 以上、テクニカルやファンダメンタルズ面からシナリオをたてましたが、ひとつの例として考えてください。この通りとなるほど、相場は簡単ではありません。あくまで私個人の35年来の経験則から想定したイメージ的なものですので、ご理解頂ければ幸いです。