
FXでは米国雇用統計の発表内容がとても重要と聞いたけれど、いつ発表されるのか、あるいはどこに注目して良いか分からない方もいるのではないでしょうか。
この記事では米国雇用統計の発表されるタイミングや、米ドル円を中心とした為替レートとの関係性について解説しています。FX初心者や、米国雇用統計がどのようにFX投資に生かせるのか知りたい方はぜひ最後までお読みください。
米国雇用統計はいつ発表される?
米国雇用統計とは、米国の雇用情勢を示す統計で、毎月アメリカの労働省労働局が発表しています。米国雇用統計の発表は月初めの金曜日に発表されるというイメージを持つ方が多いかもしれませんが、厳密には「12日を含む週の翌週から数えて3週目の金曜日」です。そのため、まれに月初めの金曜日とはならない月があります。
これは米国雇用統計の発表日は、調査対象期間が、毎月12日を含む1週間で行われることに影響していることが理由と考えられます。発表される時間は、アメリカが夏時間の時は日本時間の21時30分、冬時間の時は22時30分です。
米国雇用統計は大きく分けて、非農業部門雇用者数、失業率、平均時給(前月比と前年同月比)の3つの項目があります。それぞれの項目の概要については後ほど解説しますが、まず、各項目の2022年度の推移を見てみましょう。
【2022年度米国雇用統計の推移】
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | ||
非農業部門雇用者数 | 予想 | 15.0万人 | 40.0万人 | 49.0万人 | 39.1万人 | 32.5万人 | 26.8万人 | 25.0万人 | 30.0万人 | 25.0万人 | 20.0万人 | 20.0万人 | 20.0万人 |
結果(改定値) | 48.1万人 | 75.0万人 | 42.8万人 | 43.6万人 | 39.0万人 | 39.8万人 | 52.6万人 | 31.5万人 | 31.5万人 | 28.4万人 | 25.6万人 | 26.0万人 | |
失業率 | 予想 | 3.9% | 3.9% | 3.7% | 3.5% | 3.5% | 3.6% | 3.6% | 3.5% | 3.7% | 3.6% | 3.7% | 3.7% |
結果(改定値) | 4.0% | 3.8% | 3.6% | 3.6% | 3.6% | 3.6% | 3.5% | 3.7% | 3.5% | 3.7% | 3.6% | 3.5% | |
平均時給(前月比) | 予想 | 0.5% | 0.5% | 0.4% | 0.4% | 0.4% | 0.3% | 0.3% | 0.4% | 0.3% | 0.3% | 0.3% | 0.4% |
結果(改定値) | 0.6% | 0.1% | 0.5% | 0.3% | 0.3% | 0.4% | 0.5% | 0.3% | 0.3% | 0.5% | 0.4% | 0.4% | |
平均時給(前年同月比) | 予想 | 5.2% | 5.8% | 5.5% | 5.5% | 5.2% | 5.0% | 4.9% | 5.3% | 5.1% | 4.7% | 4.6% | 5.0% |
結果(改定値) | 5.5% | 5.2% | 5.6% | 5.5% | 5.2% | 5.2% | 5.2% | 5.2% | 5.0% | 5.6% | 4.8% | 4.8% |
米国雇用統計が重要な理由
米国は世界1位のGDPを誇る国であることから、発表する経済指標の多くが世界のマーケットに影響を与えます。その中でも注目度が高い経済指標が、米国雇用統計なのです。その理由として、米国の中央銀行であるFRB(米連邦準備制度理事会)が政策金利を決める上で、米国雇用統計の内容を大変重視していることが挙げられます。
FXでも米国雇用統計は非常に重要視される経済イベントです。どのように影響を与えるか、米ドル円の通貨ペアを例に見て行きましょう。
例えば米国雇用統計で予想を大きく上回る良い結果が発表されたとします。良い結果が発表されたため、問題ないと感じるかも知れませんが、順調すぎると今後は景気が加熱気味になり、物価が上昇し始めます。
過度な物価上昇は国民の家計に負担を与えることから、FRBは政策金利を引き上げて、景気の過熱を抑えようとします。ちなみに米国は2022年3月から12月までの間で、政策金利を4.0%引き上げました。
一方、日本はマイナス金利を導入している超低金利の国で、2022年の政策金利はマイナス0.1%のままです。
米国が政策金利を引き上げ、日本がマイナス0.1%を維持することで2国間の金利差が拡大すると、金利の高い通貨に人気が集まります。つまり金利の低い円が売られ、金利の高い米ドルが買われ、円安ドル高に向かいやすくなるのです。
仮にこのとき、米ドル円の通貨ペアで買いポジションを持っていたら、大きな利益が出ていたかも知れません。逆に売りポジションを持っていたら大きな損失が出るでしょう。
このように米国雇用統計はFXトレーダーにとっても非常に重要な経済指標なのです。
米国雇用統計の項目
米国雇用統計は雇用に関する項目が10数項目ありますが、中でも注目されるのが平均時給、非農業部門雇用者数、失業率の3つです。
- 平均時給
農業部門を除いた主要産業の1時間当たりの平均賃金をまとめたものです。平均時給が上昇すると、個人消費の拡大につながり、インフレが意識されます。逆に平均時給の低下は、個人消費の縮小につながり、デフレが意識されます。
- 非農業部門雇用者数
農業部門を除いた、民間企業や政府で雇用されている人数とその増減をまとめたものです。雇用者数が増加すると個人消費の拡大につながりインフレが意識され、雇用者数が減少すると個人消費の縮小につながり、デフレが意識されます。
- 失業率
アメリカ国内の16歳以上の働く意思のある失業者を労働人口で割って算出した数字です。失業率が低いと個人消費の拡大につながりインフレ、失業率が高いと個人消費の縮小につながりデフレが意識されます。
米国雇用統計と為替相場の関係性は?改善するとどうなる?
米国雇用統計発表直後は相場が大きく乱高下します。米国雇用統計発表前には、非農業部門雇用者数や平均時給、失業率といった項目の市場予想が発表されますが、一般的には市場予想より「良い結果になると金利が上昇」し、米ドル円であれば「円安ドル高」、逆に「市場予想を下回ると金利が低下」し、「円高ドル安」に向かう傾向があります。
しかし実際に発表されると、非農業部門雇用者数が大きく市場予想を上回ったものの、平均時給(前月比)が低下したことであまり市場が反応しないこともあります。この場合、雇用者数は増えたが平均時給が前月比よりも低下しているのでインフレには至っておらず、FRBによる政策金利の引き上げはないだろうと多くの投資家が判断したためと推測できます。
米国雇用統計は為替レートに大きな影響を与えるのは間違いありません。ただし発表に至るまでのFRBの考え方(発言)、消費者物価指数を始めとしたその他の経済指標の傾向など、米国雇用統計の発表に至るまでの経緯を押さえておかないと、まったく意に反した値動きをすることがあるため注意が必要です。
米国雇用統計が発表される時の相場の動き方
米国雇用統計は為替レートに与える影響が大きいことから、発表前、発表後で特有の動きをします。発表前、発表後の値動きの特徴について解説します。
米国雇用統計の発表前
米国雇用統計の発表がある週にさしかかると、米ドル円の為替レートはあまり動かなくなる傾向があります。これは「様子見ムード」といって、米国雇用統計は値動きが大きいことから、リスク回避のためにそれまでにポジションを減らしたり、ゼロにしたりする投資家が増えるために起こります。
米国雇用統計の発表後
米国雇用統計の発表直後は、円高ドル安になると予想していた投資家と円安ドル高と予想していた投資家の思惑が錯綜するため、上下どちらにも大きく値動きする傾向があります。
しかし、しばらく乱高下を繰り返すと、米国雇用統計の値動きの大きさを警戒してポジションを減らしていた投資家も戻り始め、ゆっくりと動向を見ながら円安あるいは円高いずれかのトレンドを形成し始める傾向があります。
チャートやテクニカル指標を確認して、このトレンドにうまく乗ることができれば利益が狙えるでしょう。
米国雇用統計の発表時に取引する際の注意点
米国雇用統計は、発表内容次第では2~3円程度為替レートが上下に大きく動くことも珍しくありません。長期トレードやスイングトレードをしていない限り、米国雇用統計の発表をまたぐトレードは避けることをおすすめします。
仮に米国雇用統計の値動きで利益を狙うのであれば、万が一に備えて損切りラインを決めておくことを心がけてください。レバレッジを通常より下げておくとさらに安全です。
まとめ
米国雇用統計は、毎月米国労働省労働局が発表している経済指標で、発表内容次第では大きく為替レートが動く可能性があります。そのため大きな利益を狙える可能性もありますが、リスクが高いため基本的に米国雇用統計発表直後の値動きで利益を狙うのはおすすめできません。
米国雇用統計直前までは極力ポジションを減らして、ある程度トレンドが見えてきたところで取引を再開することを心がけましょう。