
■消費者物価指数
9月14日、8月の消費者物価指数(CPI)が発表されました。予想前月比+0.4%に対し+0.3%でした。

前年同月比では+5.3%でした。つまり物価は、やや騰勢が衰えたものの、依然として連邦準備制度理事会(FRB)がターゲットにしている+2%を大幅に上回るペースで騰がっているわけです。
今回のCPIの騰勢が衰えた背景を簡単に説明します。
まず中古車販売価格がぐっと下がって来ました。経済が再開したとき、耐久消費財に対する需要増から半導体が不足し、半導体の不足は自動車メーカーをして新車の組み立て、供給が予定通りに進まない問題を引き起こしました。自動車ディーラーの売り場から新車が姿を消したので消費者は仕方なく中古車を買いました。その関係で中古車価格が不自然な上昇を見たわけです。
今回のデータではやっと中古車価格がザックリと調整したことが確認されました。
次にホテルの宿泊料、航空券の値段が下がって来ました。デルタ変異株の蔓延で旅行を控える人が増えたためです。
これらの要因で8月の消費者物価指数は良い感じで鎮静化したものの、このトレンドが今後も続くかどうかは未だわかりません。
その理由としてクリスマス商戦向けの商品を積み中国から米国へ向かうコンテナ船はロスアンゼルスのロングビーチ港の混雑で順番待ちとなっており、輸送費の高騰、在庫不足などの問題を生じかねない状況となっているからです。
学校における新型コロナの蔓延で自宅学習を強いられる学童も増えており、それは働く両親が休みを取って家に居なければいけないなどのやりくりの問題を引き起こしています。その関係で、サービス業などを中心に、労働力の不足が慢性化しており、それは賃金の上昇プレッシャーを起こしています。
そのような理由から消費者物価指数の上昇率が高止まりするリスクもあります。
■連邦公開市場委員会
次の連邦公開市場委員会(FOMC)は9月21・22日に開催されます。9月3日に発表された非農業部門雇用者数が予想の75万人を大きく下回る23.5万人にとどまったことから、9月からいきなりテーパーが開始される可能性は後退しました。
しかし8月27日のジャクソンホール経済政策シンポジウムでジェローム・パウエルFRB議長はハッキリと「年内にテーパーを開始する」というスピーチをしたので、それは変更されないと思います。
普通、FRBは12月に金融引き締めを開始することを避けます(=その例が全く無いというわけではありません)。
したがって「11月からテーパーを開始する!」ということを、今回のFOMCで予告するのが、最も起こりやすいシナリオだと思います。
市場参加者の中には「テーパーはもう株価に織り込まれている」とする向きもありますが、私はその見方は甘いと思います。
2013年にテーパータントラムという市場の混乱があった際も、バーナンキ議長が議会で問題発言をする前に、いまとまったく同じ感じで「テーパーはもう織り込まれた」という声が聞かれました。
いざふたをあけてみると織り込まれたと思われていたテーパーは全然織り込まれておらず、市場参加者は慌てふためきました。今回も同様の展開にならないという保証はありません。
■まとめ
8月の消費者物価指数は良い感じで騰勢が衰え、市場参加者はホッと胸を撫で下ろしました。しかしそれはテーパーが先送りになることを意味しません。9月21・22日のFOMCは、極めて重要です。
テーパー開始はFRBの金利政策の大転換に他ならず、そのような重大な方向転換の局面では慎重を期す必要があります。
保守的なトレードに徹し、(ここでイッパツ儲けてやろう)という軽率な行動は慎むべきです。